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今月のDARTS

宇宙の標準光源 ─ 星の残骸で調べるカメラの感度

E0102 image E0102 spectrum
左図は JUDOを使って見たすざくのX線写真

天体観測では、カメラなど観測装置の性能をきちんとわかっていなくてはいけません。 観測装置自体のことを知らずに写真を撮っても、それが新しい未知の現象なのか、 装置の“癖”によるものなのかわからないのです。

左図は、これまですざくが撮った1E 0102.2-7219という天体の視野とX線写真を重ねたものです。合計、9回観測したものです。 この天体は、銀河系のお隣にある銀河 ─ マゼラン星雲 ─ にある超新星残骸です。 星の中には、その一生を終える時に大爆発を起こすものがあります。 この現象を超新星爆発と言います。 星が光輝くエネルギーの源は核融合という軽い元素から重い元素が作られる反応ですが、 一生をかけて作り出された元素が爆発の時に一気に放出されます。 1E0102.2-7219は数千年前に爆発したものと考えられていますが、この時多くの酸素やネオン・マグネシウムなどをまき散らしました。

右図は、1E 0102.2-7219 からのX線のエネルギーの分布を調べたものです。 鋭く尖った山のようなものが見えますが、これが酸素やネオンが多くある証拠です。 X線の観測から、どのような元素がどれだけあるか調べることができるのです。

すざくチームは、この天体を利用して、CCDカメラの低いエネルギーでの感度を調べることにしました。 低いエネルギーのX線は薄い膜などでも簡単に止められてしまうので、打ち上げ後にもきちんと調べなくてはいけないのです。 時間が経つと感度は次第に悪くなるため、観測開始から(実は1E 0102.2-7219は すざくが一番最初に観測した天体です) およそ一カ月に一度のペースでこの天体を何度も観測しました。 その結果、左図ではいくつもの観測が重なっているのです(人工衛星の太陽電池を太陽の方向に向けるため、 季節によって視野の角度が変わります)。 図は9回分ですが、合計ではすでに17回も観測されています (DARTSで調べてみて下さい)。

現在も定期的に観測を続け、変化を調べています。 こうして調べた感度をデータ解析に反映させることで、 他の天体の正しい明るさがわかります。 また、低エネルギーのX線が止まりやすいことを逆に利用すると、 E0102で調べたカメラ自身に付着した物質の量を差し引くことで地球から天体までの間にどれだけの物質があるか調べることもできるのです。

このような観測は較正用観測と呼ばれ、観測後すぐに公開されます。 そのため誰でもデータを解析することができますが、この視野内からは特徴ある別の天体も発見され、 論文にまとめられています (武井 他 PASJに投稿中)。 たまたま明るくなった瞬間を捉えたもので、一回で二度おいしいおまけつきの観測となりました。 下の図はX線天体の温度を疑似カラーで表していますが、新発見の天体は真っ赤に輝いています。 これは非常に温度が低いことを示し、 超低温天体だと考えられています。 ただ、超低温と言っても他のX線星(通常1000万度以上)と比べた場合で、 実はこの天体はまだ50万度以上もの温度です。 冷たいどころの話ではありませんね。

transient source
新発見の天体。2005年8月には視野の端に見えていますが、 2006年6月には消えていました。

2007年5月

最終更新日: 2018年06月13日