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今月のDARTS

35 sources imaged by VSOP
図1:VSOPによりイメージングされた107天体から35天体(Dodson et al. 2008)。

「はるか」のデータアーカイブ

「はるか」は1997年に打ち上げられた、 世界で最初の(そして、Astro-Gの打ち上げまでは最後の)超長基線電波観測衛星です。 他の衛星と比較すると、「はるか」からはかなり違うデータがでます。 衛星からは、128 Mbpsという大量のデータが発生するにもかかわらず、 そのデータだけでは有益な科学データは得られません。 「はるか」は、電波天文のための衛星でありますが、 スペースVLBI(Very Long Baseline Interferometry)という、 干渉計型の望遠鏡であるために、衛星からのデータと、 地上の電波望遠鏡からのデータを干渉させなければ有益な情報は得られません。 「はるか」とこれらの地上電波望遠鏡群を組み合わせて作るスペース干渉計計画のことをVSOP(VLBI Space VLBI Observatory Programme)と呼びました。

「はるか」の観測データは日本では臼田の10mアンテナで受信されました。 1可視時間が長くて5時間を超えるくらいでしたので、 1可視の衛星のデータ量は、300 Gbyte程度です。 今でこそ、1つのハードディスクに収まるようなデータ量ですが、 「はるか」は1997年の打ち上げの衛星ですので、その当時の計算機、 ネットワーク、データ容量などを考えると、データ記録は磁気テープしか解がなく、 データ伝送は郵送、というような環境で運用を行っていました。

さらに、同容量のデータは衛星からだけではなく、各地上電波望遠鏡からも集められます。 データが集まるのは相関局です。VSOPでは、国立天文台の三鷹キャンパスに設置した相関器のほかに、 米国のVLBA相関器、カナダのDominion電波天文台にある相関器を使用しました。 そこで衛星を含む電波望遠鏡間の干渉をさせ、ユーザに渡すデータになります。

典型的な1つの観測としては、衛星2軌道分12時間程度です。 地上電波望遠鏡は10局程度を使って衛星と同じデータレートで記録をしますので、 1観測あたりのデータ量としては、7.5 Tbyte 程度です。 このデータが相関処理をすることによって、2〜20 Gbyte くらいになります。 このデータはFITS-IDI(Interferometry Data Interchange) 形式で各相関局でアーカイブされました。 FITSは天文アーカイブの業界ではなじみのある形式ですが、FITS IDIは、干渉計特有の形式です。 この書式のデータは、AIPS (http://www.nrao.edu/aips) という干渉計のための処理パッケージで処理し、データの較正とイメージングを行うことができます。 また、データ解析者の好みによってはCaltechで開発されたDifmap ( ftp://ftp.astro.caltech.edu/pub/difmap/difmap.html)というパッケージを使ってイメージングします。

VSOPでは、基本的に公募観測を行っていました。観測の提案者のデータの占有期間は、 相関処理終了後データを受け取ってから18ヶ月でした。ただし、観測の開始当初は、 10Gbyte程度のデータをネットワークを介して伝送するなどと言うのはとんでもない時代だったので、 データは、相関器のあるところ(相関局)でアーカイブ化し、 データが欲しいユーザは直接相関局に連絡をとり、データをDATテープで郵送してもらっていました。

ところが、カナダの相関局の予算がなくなり、そのようなユーザ対応が難しくなりました。 それを機に、データを宇宙研にあつめてオンラインでアクセスできるようにするプロジェクトが始まりました。 現在では、データのリクエストは、宇宙研のスペースVLBIグループが受けつけていますが、 近々オンラインデータの公開に移行する予定です。 公開準備はすでに7割程度が終了し、もうじきDARTSを通じて公開したいと考えています。

また、最近公募観測に平行して行ったVSOPのサーベイ観測の最後の結果が公表されました (Dodson et al., 2008, Ap. J. Suppl., 175, 314: 図1)。 このデータセットには、もともとの生データのほかに、 キャリブレーション処理済みの観測データ、および画像データのアーカイブも含まれています。 それらも同時にDARTSから公開したいと考えています。

村田泰宏 (宇宙科学研究本部)

2008年7月

最終更新日: 2018年06月13日