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今月のDARTS

SGR0501 light curve by Suzaku
図1:SGR 0501+4516 から検出されたバースト付近でのライトカーブ(各検出器のカウント数)。 (a) X 線撮像装置 (X-ray Imaging Spectrometer; XIS) 3 台の 0.6-10 keV の X 線カウント数を 2 秒ビンで示しました。 (b)、(c) それぞれ、硬 X 線検出器 (Hard X-ray Detector; HXD) の PIN 型半導体検出器 (10-50 keV)と GSO シンチレータ(50-250 keV) が検出した X 線カウント数を 0.5 秒ごとに示しました。 (d) HXD の周囲を囲んでいる広帯域全天モニタ(Wideband All-sky Monitor; WAM)の 28-111 keV の 1 秒ごとのカウント数。 (e)、(f) それぞれ (b)、(c) のバースト付近の拡大図を 8 ミリ秒で示しました。

SGR0501 specta by Suzaku
図2: 2008年8月26日 3:16:16.9 (UT) に 200 ms にわたって記録された、SGR 0501+4516 のバーストのプリカーサーにおける XIS-FI、HXD-PIN、HXD-GSO のスペクトル。

「すざく」が捕らえた宇宙最強の磁場

先月は、天文衛星のTOO観測について紹介しました。 今月は、TOO観測が大成功した例を紹介します。

我々の住む地球の地磁気は、わずか 0.5 ガウス程度のものですが、 超新星爆発の後に残される、高速で回転する 10 km ほどの中性子星は、 10の12乗ガウスに達する磁場を持つことが宇宙観測から明らかになっています。 さらに面白いことに、マグネターと呼ばれる特殊な中性子星は、 その磁場の強さが 3 桁も大きい可能性が観測に示されつつあります。 磁場がこれほど強くなると、光が自然に分裂したり合体するなどの現象も予想され、 極限的な物理学の実験場を宇宙が提供してくれているといえます。

マグネターには軟ガンマ線リピーターと異常 X 線パルサーという2種類があるといわれていますが、 これまでにそれぞれ 4, 9 天体ほどしか見つかっていませんでした。ところが 2008年8月21日(UT)、に Swift 衛星によって、 新しい軟ガンマ線リピーター SGR 0501+4516 が 10 年ぶりに発見され、 「すざく」衛星も 8月26日から ~40 ks の ToO 観測を行いました。 観測後10日ほどで早くも DARTS から公開されたデータを解析したところ、 X 線撮像装置が定常放射の観測に成功し、パルス周期の決定を行うと同時に、 観測時間内に 32 個近いバースト現象が記録されていることがわかってきました。

このうちいくつかは硬 X 線検出器に搭載されている PIN 型半導体検出器(HXD-PIN)でも記録されており、 なかでも 8月26日 03:16:16.9 (UT) に生じたバーストイベントは「すざく」衛星に搭載されているすべての検出器によって検出され、 巨大なバーストの前の比較的暗かった「プリカーサー」であることが明らかになりました(図1)。 他の衛星では暗くて検出が難しい「プリカーサー」をわずか 200 ms の継続時間でも、 硬 X 線検出器の GSO シンチレータ (HXD-GSO)によって 200 keV まで、 そのスペクトル取得(図2)に成功したのは感度のよい「すざく」衛星ならではといえます。

これら、新しく見付かった SGR 0501+4516 の定常放射とバーストの活動性から、 マグネターと呼ばれる宇宙最強の磁場をもった天体の正体を暴く一端が見付かっていくことが期待されています。

榎戸輝揚 (東京大学)

2008年11月

最終更新日: 2018年06月13日