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今月のDARTS

ASCA Slew image in the GC region
図1:「あすか」衛星が姿勢制御(slew)中に掃いた銀河中心領域の図。姿勢決定にうるう秒は補正済み。

Eta Carina energy spectrum by Suzaku
図2:1.6ミリ秒の周期を持つパルサーPSR 1937+21の、パルス周期で 重ね合わせた光度曲線(folded light curve)。赤が軌道決定にうるう秒を補正する前、白が補正後。

注意してください!1分が61秒になります!

もしあなたが時間に非常に厳格な人でしたら、注意してください。 2009年1月1日、日本時間午前8時59分から9時00分の間、1分が61秒になります!これは、「うるう秒」と言って、地球の回転速度の変化を補正するためのものです。

地球の回転(自転)はとても正確なので、人類は長い間、それを正確な「時計」として使ってきました。 しかし、現在では原子を使うとより正確な「時計」を構築できることがわかり、1秒の長さは原子時計を使って定義されています。

そして、そのように非常に正確な原子時計で計ってみると、地球の自転速度はほんの少しずつ遅くなっていることがわかってきたのです(その原因は、地球の内部構造に起因するそうです)。 そこで、原子時計で計った時刻の方に無理やり「うるう秒」を挿入して、地球の回転に歩調を合わせてあげる必要があるのです。 うるう秒の挿入は1972年に始まって、今回で24回めになります(前回は2006年でした)。 もし、その間、まったくうるう秒が挿入されなかったとしたら、原子時計で計った時刻と地球の回転から決めた時刻は24秒もずれていたことになります。 そのずれをそのまま放っておくと、大変なことになります。極端な話し、いずれ昼と夜が逆転してしまうでしょう!

実は、うるう秒は衛星データ解析にも影響を与えます。うるう秒を考慮することによって、データ解析の精度が向上した例を二つ紹介しましょう。どちらも「あすか」衛星についてです。 「あすか」衛星は1993年から2000年まで稼働していましたが、その間、うるう秒は5回挿入されました。 それを考慮しないでデータ解析を行うと、最大5秒のずれが生じることになります。 もちろん、X線光子が衛星の観測装置に到達した時刻については、うるう秒を考慮して計算していました。 しかし、初期の頃は衛星の軌道と姿勢の計算には、うるう秒を考慮していなかったのです。 それを忘れていた訳ではなくて、ほんの数秒間の軌道や姿勢のずれが効いてくるほど精密な観測が「あすか」衛星で可能だとは、誰も考えていなかったのです(実際には、それが可能だった訳です!)。

最初の例は、あすか衛星の姿勢制御中の観測に関してです。衛星が姿勢を大きく移動する間も検出装置はオンになっていますので、その間、空を走査(スキャン)観測することができます。 しかし、初期の頃、どうしても姿勢制御中に観測される天体の位置とカタログ上の天体の位置が合いませんでした。 よく検討してみたところ、姿勢決定にはうるう秒が考慮されていなかったため、衛星が数秒間に移動する分、天体の位置がずれていたのです。 それを補正することによって、正しい天体の位置が得られました(図1)。 くわしい説明はこちらをご覧ください。

次の例は、パルサーの観測に関してです。 PSR 1937+21というパルサーは、周期1.6ミリ秒で高速回転しています。 そのような超短周期のパルサーの解析を正確に行うには、地球の運動と人工衛星の運動を補正して、あたかも太陽系重心にぴたりと静止したような状態で観測しなくてはいけません(barycentric correction)。 そうしないと、観測者の動きによる「ドップラー効果」により、見かけの周期性が現れたり、本当の周期が壊されたりしてしまいます。実際、初期の頃の解析では人工衛星の軌道計算にうるう秒をいれてなかったので衛星の運動の補正が不十分で、真のパルスの形を得ることができず、それが「なまって」しまっていたのです。 衛星の軌道決定にうるう秒を考慮することによって、よりシャープな、真のパルスの形を得ることができました(図2)。 より詳しい説明は、こちらをご覧ください。

海老沢 研 (C-SODA 科学データ利用促進グループ)

2008年12月

最終更新日: 2018年06月13日