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今月のDARTS

「すざく」がとらえたX線連星系における宇宙線粒子加速

X線でひときわ明るく輝く連星、X線連星は、X線天文学の初期から研究が盛んに行われてきました。X線連星 では、中性子星あるいはブラックホールに分類されるコンパクト天体が、通常の星と連星系を形成し、星風の 一部がコンパクト天体の強い重力場に落ち込むことで熱的に放射する成分でX線で明るく輝くと考えられてい ます。ところが最近、LS 5039というX線連星からX線光子の10億倍もエネルギーの高いTeVガンマ線が発見 されました。これは、このX線連星でテラ電子ボルトにまで粒子が加速されている証拠となりました。

さらに驚くべきことにこのTeVガンマ線の放射が3.9日のLS 5039の連星周期と連動して時計のように正確 に、強弱を繰り返していることが発見され、軌道に沿って変動する超高エネルギー粒子やTeVガンマ線がどの ようにして作るのかといった議論が巻き起こりました。

この天体の正体を探るため、すざく衛星を用いて、連星周期の1.5倍、6日間という長期観測を行い、全連星周 期に対するスペクトル変動をとらえました。図1は、すざくに搭載されているX線CCDカメラ(XIS)で得られた 光度曲線を示しています。X線の強度は連星の軌道周期に変動しており、その変動のパターンはTeVガンマ線 と類似していることが明らかになりました(Takahashi et al., ApJ, 697, pp. 592-600)。X線の放射は、超高 エネルギーにまで加速された電子からのシンクロトロン放射と考えられます。シンクロトロンX線が連星周期 にともなって変動する現象が宇宙で見つかったのは初めてのことです。さらにすざくで得られた結果を過去の 部分的な観測と比較するため、 DARTSから公開されたASCAのデータと公開されているXMM-Newton・ Chandra衛星のデータを解析したところ、光度曲線の細かい構造までもがすざくで得られた結果と一致する という驚くべき結果が得られました(Kishishita et al., ApJ, 697, L1-L5)。シンクロトロンの放射強度が過去 10年にわたって正確な周期変動を保っているという結果は、連星系というダイナミックに活動している天体に おいて、連星軌道だけに依存する非常に安定した超高エネルギー電子を生成する加速機構と放射機構が存在す ることを意味しています。

こうした連星系における粒子加速機構の発見は、これまでのX線連星の認識を大きく変え、宇宙線の起源と いった宇宙物理学の大きな課題の解明につながるものと期待されます。

本研究はJAXA宇宙科学研究本部の他、SLAC国立加速器研究所、 マックスプランク研究所との共同研究として行われました。

図1: (a) LS 5039の軌道周期に同期したX線光度曲線(1-10 keV)。(上図)すざくのX線CCDカメ ラ(XIS)で得られたデータを2000秒ビンで示しました。図は、軌道周期が0.0≦φ<1.0の範囲の光 度曲線を1周期ずらしたものを重ねて表示しています(白丸)。(下図)過去のX線データとの比較を 表したものです。それぞれの色は、XMM-Newton(青、シアン、緑)、ASCA(赤)、Chandra(マ ゼンタ)のデータを示しています。(b)軌道周期が1.2≦φ<1.8の範囲を拡大したもの。

岸下 徹一 (ISAS/JAXA)

2009年10月

最終更新日: 2018年06月13日