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今月のDARTS

Reimei
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図1.(上)2008年1月28日のれいめい衛星オーロラカメラ(MAC)の画像の例。青、緑、赤はそれぞれ波長428nm、558nm、670nmを示す。 (下)同時の降下電子E-t(Enery-time)図。開始時刻は10:58:05 UT(エネルギー別フラックスの時系列図、縦軸:エネルギー、横軸時刻:フラックス)。

れいめい衛星によるサブストーム開始時のズームイン観測

2005年8月に打ち上がったれいめい(INDEX)衛星は、これまで4年以上にわたり順調に飛行し、膨大な観測データを取得しつつあります。これらのデータは、ISASのDARTSで公開されています。

サブストーム(Substorm)現象は、地球磁気圏・電離圏の研究分野で、最も興味が集まっている現象の一つです。特にその引き金(トリガー)プロセス、すなわち、開始(オンセット)時に発生する大規模かつ早い時間変動の因果関係を明らかにすることは容易ではなく、様々な観測データを如何にうまく組み合わせ、解釈し、現象の本質を引き出すかが研究の鍵となります。

2008年1月28日10:58 UT付近において、れいめい衛星が北米地上地磁気・全天カメラ網(THEMIS GBO)の上空を通過した際に、サブストームオンセットが発生しました。このイベントは、れいめい衛星搭載オーロラカメラ(MAC)の詳細な画像データ(空間分解能:1 km×1 km、時間分解能:120 msec)とオーロラプラズマ粒子分析器(ESA/ISA)のその場観測データ(空間分解能:300 m×300 m、時間分解能:40 msec)に加えて、地上全天カメラ網による広域オーロラ分布連続データにより、「ズームイン」(れいめい)と「ワイド」(地上カメラ網)の両面から捉えることができた貴重な例です。このときのれいめい衛星によるオーロラ画像と降下電子のデータを図1に示します。前半部においては、10:58:17 UT付近に東西方向に数km/sで反方向に移動する流れの対(Flow shear)を示すオーロラアーク(Arc 1)が観測され、それに対応してアルフベン波の加速による約1keV以下のエネルギーをもつ超熱的電子と準静電加速による10keV以上の加速電子が捉えられました。一方、後半部には、10:58:28 UTで画像では折り畳まれた蛇のようなオーロラ(Arc 2)が見られ、降下電子データでは数10eVと数keVの間でエネルギーが激しく変調する特徴が認められます。

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図2.THEMIS地上全天カメラ網(Fort Yukon, Inuvik, Forth Smith)で捉えられたサブストームオンセット。右下では、れいめい衛星カメラ画像を、再接近の10:58 UTのデータにオーバーラップさせている。

次に、地上全天カメラ網のうち3箇所(Fort Yukon, Inuvik, Forth Smith)の地上カメラで捉えられた全天の合成画像を図2に示します。れいめい衛星通過に最も近い10:58 UTに、Arc 1がInuvik上空の東西に限られた領域で新たに現れたことがわかります。また、Arc 2は定在的に低緯度側に存在していたことがわかります。折り畳まれたArc 2の存在は、オンセット時に磁気圏赤道面の宇宙プラズマ分布に何か強い応力が存在することを示唆するのかもしれません。さらに、10:59 UT以降のオーロラ極側爆発が、Inuvikを中心に東西に拡大していったことが詳細に捉えられています。


このイベントにおける れいめい搭載オーロラカメラMACの動画 地上全天カメラ網の動画 をリンクしました。

以上の例では、れいめい衛星が通過した10:58 UT付近は、オーロラが低緯度側に移動していく成長相(growth phase)から、オーロラが輝き始め(initial brightening)、高緯度側に爆発的に拡大した(expansion onset)タイミングであることがわかりました。Arc 2は低緯度側に定在的に見られた成長相オーロラに対応し、その高緯度側に新たに10:57:30 UTに発生したオーロラアーク(Arc 1)が、時間とともに極側に移動しながら増光している様子を捉えたことになります。さらに、れいめい衛星が通過した約15-20秒後に、Arc 1、Arc 2ともに複雑な変動を開始し、オーロラ極側爆発へと発展していきました。上記のようなオーロラに関するデータに加え、磁気尾部のTHEMIS衛星群との同時観測により、マクロな磁気圏変動と電離圏における微細なオーロラ・電離圏電流変動との対応関係が明らかにされつつあります。

坂野井 健 (東北大学惑星プラズマ・大気研究センター)
平原 聖文 (東京大学大学院理学系研究科)
2010年2月

最終更新日: 2018年06月13日