2012年5月21日金環日食 ~「ひので」衛星から見た日食を即時公開~

ひので観測チーム


[2012年5月21日掲載]

「ひので」がとらえた日食


[2012年5月16日掲載]
[2012年5月18日追記]

イメージ画像(クリックで拡大)

2012年5月21日に「ひので」衛星は日食帯に遭遇します。 その際に撮影する日食のX線太陽画像・動画を、日食当日の午後に公開します。 この日食は、日本時間2012年5月21日(月)朝に、日本を含む東アジアからアメリカ西部で「金環日食」として観測できるものです。

「ひので」衛星は、午前6時33分(世界時では前日21時33分)、東シナ海上空からインドネシア上空を飛翔している時に1回目の部分日食に遭遇します。 その際、「ひので」に搭載されたX線望遠鏡(XRT)によりX線で太陽全面を連続的に撮影する予定です。太陽コロナを背景に、黒い月が通過していく様子がとらえられます。 今回、「ひので」衛星は合計4回日食帯に遭遇しますが、そのどれもが部分日食となります。 部分日食中に、搭載望遠鏡の較正のためのデータを取得する他、米国西部にある電波望遠鏡で行われた日食観測を支援する観測を行う予定です。

「ひので」運用チームは、このX線画像のムービーを当日午後、観測データの準備が整い次第、本ページ上にて公開する予定です。

公開予定時刻:日本時間午後4時ころ
(データ取得状況によっては前後する可能性があります)

観測データ(テレメトリデータ)は、北極圏および南極にある複数の地上受信局にて順次受信され、インターネット経由で神奈川県相模原市にあるひので運用室に伝送されます。そこでデータ処理が施された後に公開されます。また、当日最短の時間で観測データを公開するために、搭載された記録レコーダの使用計画を綿密に立て、観測直後に最新の画像データを地上に送信できるようにします。

地球上空を周回する「ひので」から見た、太陽に対する月の移動の様子は、地上で見るのとは異なります。

解説:「ひので」から見た月の移動の様子:


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図中の時刻は世界時です。
予報計算:相馬充(国立天文台)

「ひので」は、高度約700kmを北極から南方へ移動する途中、 東シナ海からインドネシア上空にて、日食帯を横切ります。
第1接触: 6:33:47 (JST) (21:33:47 UT)
最大: 6:41:37 (JST) (21:41:57 UT)
第4接触: 6:50:04 (JST) (21:50:04 UT)
「ひので」から見た部分日食は、月が太陽の南西(右下)から現われ、北東(左上)に向けて太陽面を横切っていきます。 最大食分は約80%です。 「ひので」の移動速度は時速2万7千キロと非常に早いため、部分食の開始から終了がわずか約17分しかありません。



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図中の時刻は世界時です。
予報計算:相馬充(国立天文台)

今回、「ひので」の4回目の日食は地球の「夕方」側で、アメリカ上空で遭遇します。 (最大食 2:01:22 UT)
「ひので」衛星は南極から北極の方に移動しているため、月の影の動きは日本付近で観測したときとは逆に左下から上に向かって動きます。 「ひので」が2周半する間に月の影が太平洋を渡って日本からアメリカへ移動していることになります。


解説:「ひので」の軌道と月の影


月の影と「ひので」軌道
図中の時刻は日本時間。
クリックで全体像を表示。
予報計算:相馬充(国立天文台)

右図は太陽から見た際の地球、月の影(半影、擬本影)、および「ひので」の軌道(点線)です。 月の影は「ひので」が一番近付く時刻の状態を黒線の円で描いており、擬本影から引いてある矢印は月の影が動く方向、地球上に書かれている赤い線は今回の金環日食が観測できる場所を示しています。 擬本影の円の中が金環日食になることを示しますが、「ひので」が一番近付いたとき(点線上の黒い点)でも擬本影の中には入りません。そのため、「ひので」は今回、部分日食を観測することになります。

解説:日食観測時の「ひので」の位置


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図中の時刻は日本時間。
予報計算:相馬充(国立天文台)
右図は1回目の日食観測時の「ひので」の位置を地球上に示したものです。 「ひので」は実際にはこの位置の上空700km程度のところを移動中に日食に遭遇することになります。

過去の観測例


宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所
自然科学研究機構 国立天文台