あかり
AKARI (ASTRO-F)
ミッションの解説
概要
「あかり」 (AKARI, ASTRO-F) は、日本の宇宙科学研究所 (ISAS) が中心となって開発した赤外線天文観測衛星です。そのミッションの主な目的は、宇宙からの赤外線を高感度・高解像度で観測し、全天の赤外線マップを作成することです。2006年2月22日に打ち上げられ、2011年6月に科学観測を終了しました。
衛星は、重量約 960 kg、大きさは 1.9 × 1.9 × 3.2 m で、高度約750 kmの太陽同期極軌道を、周期約100分で周回しました。
天文学上の目標は多岐にわたりますが、最大のものは以下の2点です。
- 銀河の形成と進化過程の解明
- 星形成、及びその周りでの惑星形成過程の解明
これらを達成するため、以下のような観測を行いました。
- 波長 50-180 μm での無バイアス全天サーベイ
- 波長 2-180 μm での、サーベイより高感度の撮像、および、分光観測
観測フェーズについて
「あかり」の観測は、望遠鏡の冷却システムの状態などにより、以下の 3 つのフェーズに分けられます。
- Phase 1 最初の半年間の全天サーベイ観測中心の期間 (2006年5月8日 - 2006年11月9日)
- Phase 2 冷却用の液体ヘリウムが枯渇するまでの期間 (2006年11月10日 - 2007年8月26日)
- Phase 3 冷却用の液体ヘリウム枯渇後の期間 (2008年6月1日 - 2010年5月14日)
観測装置について
68.5 cm 口径のリッチー・クレチアン式反射望遠鏡で、焦点面に Far-Infrared Surveyor (FIS) と InfraRed Camera (IRC) の2種類の観測装置を搭載していました。どちらの観測装置も、撮像モードと分光モードでの観測が可能です。
液体ヘリウムを使った冷却システムを搭載しており、これにより観測装置の性能を最大限に引き出しました。
Far-Infrared Surveyor (FIS)
FIS は、遠赤外線領域の全天サーベイを行うことを主な目的として搭載された観測装置です。 撮像モードでは、フィルターと検出器の組み合わせによって 4 つの波長帯で観測を行い、全体で 50 - 180 μm の波長範囲をカバーします。 分光モードでは、偏光板と検出器の組み合わせによりフーリエ分光器を構成し、全体で 80-170 μm の波長範囲の分光撮像観測を行います。
InfraRed Camera (IRC)
IRC は、近赤外線から中赤外線領域で、主に指向観測を行う観測装置です。IRC は 3 つの観測独立したカメラシステム (NIR, MIR-S, MIR-L) から構成され、合わせて 1.7 - 26.5 μm の波長範囲を観測します。 撮像モードでは、フィルターの切り替えにより計 9 つの波長帯で観測を行います。 分光モードでは、フィルターに代わりプリズム・グリズムを用いることで低分散分光観測を行います。
成果
「あかり」の代表的な成果として、以下のようなものが挙げられます。
- 全天赤外線サーベイの完成: 「あかり」は、全天の 96 % 以上を 2 回以上観測し、全天赤外線マップを作成、多数の未発見の赤外線源を特定しました。
- 星形成領域の詳細な観測: 近赤外から遠赤外までの観測により、星形成領域の詳細なプロファイルを描写しました。
- 彗星および小惑星の赤外線観測: 太陽系内の彗星や小惑星の物理特性を理解するためのデータを提供しました。
また「あかり」の観測データを元にして、赤外線全天マップや様々なカタログなど、多くのデータプロダクトも作成されています。 これらの観測データおよびプロダクトは、星や銀河の形成過程、宇宙の進化に関する貴重な情報を提供しています。
参考文献
装置論文
- Kaneda, H. et al. (2007) Publications of the Astronomical Society of Japan - In-orbit focal adjustment of the AKARI telescope with IRC images
- Nakagawa, T. et al. (2007) Publications of the Astronomical Society of Japan - Flight Performance of the AKARI Cryogenic System
- Onaka, T. et al. (2007) Publications of the Astronomical Society of Japan - The Infrared Camera (IRC) for AKARI -- Design and Imaging Performance
- Kawada, M. et al. (2007) Publications of the Astronomical Society of Japan - The Far-Infrared Surveyor (FIS) for AKARI
データセット
- AKARI FIS Bright Source Catalogue Public Version 1
- AKARI FIS Bright Source Catalogue Version 2
- AKARI FIS Faint Source Catalogue Version 1.0
- AKARI Far-infrared All-Sky Survey Maps
- AKARI FIS-FTS Spectral Image Map
- AKARI Far-infrared Slow-scan Images Version 1
- AKARI Pointed Observation Raw Data Version 1 (Phase 1&2)
- Asteroid catalog Using AKARI (AcuA)
- AKARI Asteroid Flux Catalog Ver.1
- AKARI IRC Point Source Catalogue Public Version 1
- The Asteroid Catalog Using AKARI IRC Slow-Scan Observation
- AKARI-LMC Point Source Catalogue
- AKARI-NEP-Deep Mid-Infrared Source Catalogue Version 1
- AKARI-NEP-Deep Mid-Infrared Source Catalogue Version 2
- AKARI-NEP-Wide IR Source Catalogue
- AKARI/IRC All-Sky Image Maps Version 1.0
- AKARI/IRC Pointed Observation Images (Phase 1&2)
- AKARI/IRC Pointed Observation Images in Post-Helium (Phase 3) Mission
- AKARI Mid-infrared Slow-scan Images Version 1
- AKARI Pointed Observation Raw Data Version 2 (Phase 3)
- AKARI Near Infrared Asteroid Spectral Catalog Ver.1
- AKARI Near Low-resolution Spectral Catalogue of Diffuse Sky Patches
- AKARI Near-infrared Spectral Atlas of Galactic HII regions
- AKARI/IRC NIR Spectral Atlas of Galactic Planetary Nebulae
- AKARI-LMC Point Source Catalogue
- IRC Point Source Spectroscopy Data
- AKARI/IRC MIR-S slit-less spectroscopic catalogue