あすか
ASCA (ASTRO-D)
ミッションの解説
概要
「あすか(ASTRO-D)」衛星は、1993年2月20日に打ち上げられた日本のX線天文衛星です。宇宙の科学的進化の解明、ブラックホールの検証、宇宙における粒子加速の場所の確認、ダークマター(暗黒物質)の分布とその全質量の決定、宇宙X線背景(CXB)放射の謎の解明、X線天体と深宇宙の進化など、様々な研究を目的としています。
重量は約420kgで、近地点高度525km、遠地点高度615km、傾斜角31度、周期96.5分の略円軌道に投入されました。打上げ後、「あすか」は順調に観測を続けましたが、2000年7月に太陽活動の影響で観測不可能となり、最終的に2001年3月2日には大気圏に突入し消滅しました。
観測装置
Solid-state Imaging Spectrometer (SIS)
X線CCDカメラ(SIS)は、一つ一つのX線光子のエネルギーを計測する「フォトン・モード」で動作するカメラです。このカメラは、ペルチエ素子による電子冷却と放射冷却により、-70℃まで冷却させて観測を行います。SISは約0.4 keVから12 keVの広い範囲のX線を検出することができ、エネルギー分解能に優れています。
Gas Imaging Spectrometer (GIS)
撮像型蛍光比例計数管(GIS)は、「てんま」衛星に搭載された装置を改良した観測器です。SISに比べて広い視野を有し、一度に広範囲の観測が可能です。GISは、ガスを用いたプロポーショナルカウンタで、宇宙からのX線光子がガス内で発生させた蛍光を検出することで、X線のエネルギーと位置を測定します。エネルギー範囲は0.7 keVから10 keVです。
成果
「あすか」衛星は、以下のような数多くの天文学的発見と成果をもたらし、宇宙物理学の発展に大きく寄与しました。
-
宇宙の化学的進化の解明
「あすか」の観測データは、宇宙の元素の分布とその生成過程に関する新しい情報を提供しました。特に、超新星爆発によって生成された元素の分布が解明されました。
-
ブラックホールの検証
「あすか」のX線観測により、多くのブラックホール候補天体が観測され、その存在が確認されました。また、ブラックホール周辺の物質の挙動やX線の変動パターンも解析されました。
-
ダークマターの研究
「あすか」は、銀河団のX線放射を通じて、ダークマターの分布とその全質量の決定に貢献しました。これにより、宇宙の構造形成に関する新たな知見が得られました。
-
宇宙X線背景放射(CXB)の解明
CXBの高精度なスペクトルデータが取得され、その起源に関する理論モデルの検証が行われました。この成果は、深宇宙の進化や大規模構造の形成に関する理論を支持するものとなりました。
参考文献
装置論文
- Ohashi T. et al. (1996) Publications of the Astronomical Society of Japan - The Gas Imaging Spectrometer on Board ASCA
- Makishima K. et al. (1996) Publications of the Astronomical Society of Japan - In-Orbit Performance of the Gas Imaging Spectrometer onboard ASCA
- ASCA Guest Observer Facility (1998) ASCA Technical Description