ひのとり
Hinotori (ASTRO-A)
ミッションの解説
概要
「ひのとり (Hinotori, ASTRO-A)」は、東京大学宇宙航空研究所 (現:宇宙科学研究所) が中心となって開発したX線太陽観測衛星です。太陽の硬X線フレアの2次元像、太陽粒子線、X線バーストなどの観測を目的として、1981年2月21日に鹿児島宇宙空間観測所 (現:内之浦宇宙空間観測所) からM-3S-2ロケットにより打ち上げられ、1991年7月11日に運用を終了しました。
衛星の重量は 188 kg、対面距離 92.8 cm、高さ81.5 cm の八角柱型であり、4枚の太陽電池パドルを搭載しています。近地点高度 576 km、遠地点高度 644 km、軌道傾斜角 31度の略円軌道を1周97分の速さで周回しました。
観測装置について
Solar Flare X-ray Imager (SXT)
SXTは、太陽フレアのX線像を取得する装置です。主に硬X線を観測し、高温のフレア領域を高解像度で撮影することを目的としています。SXTは、高エネルギーのX線を検出し、フレアの進行と共に変化する高温プラズマの分布を可視化します。
Solar Soft X-ray Bright Line Spectrum Analyzer (SOX)
SOXは、太陽の軟X線輝線スペクトルを解析する装置です。この解析により、太陽コロナでのイオン化状態や元素の存在比を調査します。この装置は、特定の波長のX線を検出し、軟X線スペクトルの輝線から各元素の情報を取得します。
Solar Soft X-ray Monitor (HXM)
HXMは、太陽の軟X線を連続的に観測する装置です。これは、太陽活動の変動をリアルタイムで監視するために使われ、突発的なフレアの発生時に重要なデータを提供します。この装置は、軟X線に対する高い感度を持ち、フレアの発生とその進行を詳細に追跡します。
Solar Flare Monitor (FLM)
FLMは、太陽フレアをリアルタイムで監視する装置です。この装置は、フレア発生のタイミングとその強度を即座に把握するために使用されます。FLMのデータは、他の観測装置の運用判断にも重要な情報を提供します。
Solar Gamma Ray Monitor (SGR)
SGRは、太陽から放出されるガンマ線のモニタリングを行う装置です。この装置は、高エネルギーのガンマ線を検出し、太陽フレアによる高エネルギー現象を研究します。SGRのデータは、フレアに関連する高エネルギー粒子の生成メカニズムの解明に寄与します。
Particle Ray Monitor (PXM)
PXMは、太陽から放出される粒子線を観測する装置です。この装置は、太陽風や太陽フレアによる粒子の流れをモニタリングし、粒子のエネルギースペクトルを解析します。PXMのデータは、太陽活動と地球磁気圏への影響を理解するための重要な情報を提供します。
Plasma Electron Density Measurement Instrument (IMP)
IMPは、プラズマ中の電子密度を測定する装置です。この装置は、プラズマの密度分布を観測し、フレア発生時のプラズマ変動を解析します。IMPのデータは、プラズマ中の電子密度の時間変化を詳細に追跡します。
Plasma Electron Temperature Measurement Instrument (TEL)
TELは、プラズマ中の電子温度を測定する装置です。この装置は、プラズマの温度分布を観測し、フレア発生時の高温現象を解析します。TELのデータは、プラズマ中の電子温度の時間変化を詳細に追跡します。
得られた成果
「ひのとり」は、定常観測体制に入った初日に大規模な太陽フレアを観測し、その後1ヶ月の間に大小さまざまな41のフレアの観測に成功しました。これにより、太陽コロナ中に存在する5000万度もの高温現象や、光速で移動する電子の雲など、新たな現象が発見されました。また、これらの観測データは国際的な太陽活動極大期観測プロジェクトにも提供され、太陽活動の理解に大きく貢献しました。