てんま
Tenma (ASTRO-B)
ミッションの解説
概要
X線天文衛星「てんま(ASTRO-B)」は、X線天体のエネルギースペクトルの精密観測およびガンマ線バーストの観測を目的とした衛星です。重量は216kg, 対面寸法は 94 cm x 89.5 cmの四角柱型、太陽電池の発電能力は最大150ワットで、1983年2月20日に打ち上げられ、近地点高度497km、遠地点高度503km、傾斜角32度、周期94分の略円軌道に投入されました。太陽電池パドルの展開や各機器のテスト、磁気トルクによる姿勢制御、スピン制御などを順調に実施し、1983年3月から定常観測を開始しました。主にX線天体を観測対象とし、エネルギースペクトルの精密測定を行いました。
1984年7月には電源系の不具合が発生しましたが、主観測器には異常がなく、そのままの状態で観測が続けられました。多くの銀河系・銀河系外天体のX線分光を行ったのち、1989年1月19日に大気圏に再突入しました。 DARTSでは、「てんま」の生テレメトリデータと観測ログをアーカイブしています。データ処理ソフトや解析ソフトはアーカイブ化されていないため、科学的なデータ解析はサポートできない可能性があります。
観測装置
Scintillation Proportional Counter (SPC)
SPCは、「てんま」の主検出器となる蛍光比例計数管です。2から60 keVのX線帯域をカバーし、10本のガスシンチレータ比例計数管から成り立ちます。高いエネルギー分解能を持つため、X線天体の詳細なスペクトル解析が可能です。
X-ray Focusing Collector(XFC)
XFCは、0.1-2 keVの低エネルギー範囲をカバーし、軟X線天体を研究する軟X線反射集光鏡装置です。一次元集光鏡と薄膜多芯比例計数管の組み合わせのサブシステムが2つで成り立ちます。
Transient Source Monitor (TSM)
TSMはアダマール変換テレスコープ(Hadamard X-ray Telescope; HXT)とスラッツコリメータ(ZY Telescope; ZYT)から成る広視野X線モニターです。位置分解能は約1度で、新星の発見や既知の天体の強度変動を連続的にモニターすることができます。
Radiation Belt Monitor/Gamma-Ray Burst Detector (RBM/GBD)
RBM/GBDは、10-100 keVのエネルギー範囲において、ガンマ線バーストなどの突発天体の検出を行うNaIシンチレーター検出器です。South-Atlantic Anomaly と呼ばれる高放射線帯を検知し、各機器へのアラームを出す役割も担っています。
成果
「てんま」は、蛍光比例計数管の高いエネルギー分解能を活かして、様々なX線天体のエネルギースペクトルを精密測定しました。銀河面に沿って存在する高温プラズマの発見、X線バースト中の鉄の吸収線の発見など、ラピッドバースターの観測など、X線天文学の発展に大きく貢献しました。