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観測・成果編

GALAXYの観測成果

激変星 HR1099

 HR1099は太陽系から約120光年離れた位置にある恒星ですが、普通の星と違う点は、強い電波を放射することです。 しかも放射する電波の強さが激しく変化することが知られています。普段はほとんど観測できないほどの弱い電波しか出していないのに、ある時には突然電波の強さが10倍以上も強くなる「フレア」という現象を起こします。フレアは数時間ほど続いて、 また定常状態に戻ると考えられています。

 HR1099のこれらの特異な性質は研究者の興味を引き、様々な観測と理論的な研究が行われてきました。 しかし電波を放射する物理的なメカニズム、またフレアがどうやって起こるのか、といった基本的な問題も十分には解決できていません。
それはHR1099が小さな天体であり、十分な角度分解能で観測出来なかったことや、フレアがいつ起きるのか予想できないため、 観測を行うことが困難だったからでした。


GALAXY観測の成果

 私たちOLIVE/GALAXY実験グループは、HR1099の電波放射・フレアの物理的な機構を解明するために、GALAXY観測網で1998年から観測を行ってきました。
観測は一月に1〜2回程度で、その日にHR1099がどのような状態にあるのかモニターし続ける、というものです。

 その結果、フレアを起こしていない場合は、定常的に、強度約20mJyの電波を放射していることがわかりました。そして1999年6月8日、ついにフレアしている瞬間の観測に成功しました。
この日、GALAXY観測網で観測を開始すると、普段とは全く違った、強い電波が検出されたのです。しかも普段ならSバンド(2GHz帯)の電波の方が強いのですが、この日はバンド(8GHz帯)の電波強度がはるかに強くなっていました。これはまさにフレアの瞬間をとらえた観測結果でした。

 我々はフレアのその後の変化を観測するために、観測スケジュールを急いで変更し、その日の観測時間の最後まで連続5時間にわたってHR1099を観測し続けました。その結果、最初はバンドで非常に強い電波を出していたのですが、バンドでの電波強度はほぼ直線的に低下を続け、一方、Sバンドの電波は時間とともにあまり大きな変化を示しませんでした。これは、フレアが始まる時に高いエネルギーを持った電子が放出され、磁場と絡み合って電波を放出し、やがてエネルギーを失って暗くなっていく、という過程としてうまく説明できそうです。

This data is copyrighted by the Space Telescope Institute(STScI Digitized Sky Survey, (c)1993,1994,AURA,Inc.all rights reserved).
光学像
Condon,et al. 1998,AJ,115,1693;

従来の電波像(提供 VLA)

 このHR1099の観測では、OLIVE/GALAXYの特長が発揮されました。まず、HR1099がフレアしていることを観測中に発見できたことです。通常のVLBI観測では、観測中は磁気テープにデータを記録するだけなので、天体で何が起きているのか全くわかりません。
しかし光結合VLBIの場合は 観測中に相関処理結果がどんどん出てきますので、ある程度は天体がどうなっているのかわかるのです。 もしこの観測を普通の磁気テープで行っていたら、数日後に相関処理を行ってようやくフレアを発見したことでしょう。
もちろんそのときには観測が終わっていますから、スケジュール変更や連続5時間観測はできません。

 もう一つの重要な結果は、高分解能のVLBIでフレアを観測出来たということです。残念ながらGALAXY観測網では角度分解能がもうちょっと不十分なので、フレアしている部分の構造や運動まで観測することは出来ませんでした。
それでも今後観測網を広げていくことで、もっとフレアの現象解明に役立つ観測が出来ることは間違いありません。

<<- 活動銀河中心核のブラックホール

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