宇宙物理学研究系(X線天文学) 海老沢 研 教授
Q:研究者を目指したきっかけは?
元々どちらかと言えば理科系が得意でしたが、大学で理学部に行って自然のことを研究するか、医学部に行って人間の精神や脳の研究をするか、工学部で建築を学ぶか、だいぶ迷いました。進路で悩んでいた高2の頃、宇宙のこと、相対論や宇宙論について書かれている本を読んで、これは面白いなと思い、自然科学、特に宇宙の研究を目指すことにしました。
Q:JAXAを選ばれた理由は?
特にJAXAを選んだということはないです。大学は京大、大学院は東大の天文学専攻に進み、この宇宙科学研究所に大学院生として在籍し、博士号を取得しました。その後、ちょうど日本とアメリカで共同で打ち上げる「あすか」衛星に関わる仕事がNASAであったので、しばらくNASAで研究をしていました。NASAから派遣されて、スイスでヨーロッパの衛星の仕事をしたこともあります。日本を離れて13年ぐらい経った頃、ちょうどJAXAに教授のポストの公募が出て、応募して採用されました。そのポストが、我々が今やっている、DARTSでデータアーカイブを開発するというポストです。私がNASAやヨーロッパでずっとやっていたことに近かったので、採用されたのだと思います。
Q:X線天文学とは?
X線で人間の体を見ると、レントゲン撮影のように、目に見えないものが見えてきます。同じようにX線で空を見ると目に見えない、もっと奥深くを貫いたものが見えるんですね。特に私が一番興味を持っている天体、ブラックホールは、それ自身は光を出さないのですが、ブラックホールの周辺はX線で非常に明るく光っています。その例をお見せしようと思います。
X線天文について
Q:実際どのように研究(データ解析)をしている?
データ解析について
Q:これらのデータが入手できるDARTSをどのように自分の研究に活かしているか?また、どのように他の研究者に使って欲しい?
一つの例をお見せしたいと思います。
JUDO2について
Q:これまで研究してきて大変だったことは?
一生懸命研究しても成果が出ないことが大変です。データを取ってきて、なかなか成果が出なくて苦しいということは、何度も何度もありますね。
Q:これから先も研究を続けていくうえで期待することは?
今年、JAXAのXRISM衛星が上がります。XRISM衛星はエネルギー分解能が非常に良い、マイクロカロリメーターという装置を積んでいて、それが様々な天体のX線のエネルギースペクトルを詳細に明らかにして、素晴らしい成果を上げることでしょう。先ほど私が示したような活動的銀河中心核のX線のエネルギースペクトルモデルが、XRISM衛星のデータを使って確認され、数年後XRISM衛星の成果が出そろったころには、我々が提案したモデルがもっともらしい、と証明されることを期待しています。
Q:皆さんにメッセージをお願いします。
自然というのは美しいもので、頑張って研究するとどのようなものかわかってきます。この自然界にどうやって地球が誕生して、人間が誕生したのか誰も答えを知らないのですが、自然のことを研究すれば、それが少しずつわかってくる、それはとても面白いことです。さらに今JAXAが考えている計画、LiteBIRD衛星は、宇宙の始まり、宇宙がどうやって誕生したかを、まさに明らかにしようとしています。人類にそんなことができる、ということ自体が驚きであり、だんだんと宇宙の姿を知っていくことは大きな喜びです。そういう科学的なアクティビティを、世界中の人たちと協力して進め、宇宙に関する様々な知識を共有することによって、人間社会がほんのちょっとずつでも進歩していけばいいなと思っています。