宇宙物理学研究系(赤外線天文学) 山村 一誠 准教授

Q:宇宙の研究者を目指したきっかけは?

小学生のときに天文に興味をもち、いわゆる天文少年でした。高校、大学と、一時期他のことに興味が移ったのですが、大学院を受験するときに、昔の気持ちを思いだして、天文学専攻に進みました。30年近く前の当時は、大学院で天文学を志した人のほとんどは研究者の道に進む時代でしたから、自分も迷いはありませんでした。幸運にも研究者の職に就くことができ、今に至ります。

Q:JAXAで働くまでの経緯は?

大学院では電波天文学、主に電波望遠鏡を使った研究をしていました。大学院を修了したときに、日本で最初の赤外線望遠鏡IRTSというものの打ち上げがあり、取り組んでいた赤色巨星の研究にも重要なデータだったので、そこから赤外線天文学、特に宇宙から観測するスペース赤外線天文学に関わるようになりました。当時、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)が中心となって開発したISOという赤外線天文衛星の打ち上げがあり、最初は日本学術振興会の特別研究員として、その後現地の大学の研究員として、約3年間オランダで研究をしました。その後、宇宙科学研究所(ISAS)で赤外線天文衛星ASTRO-F(後に「あかり」)の計画がスタートして、その推進のためISASの研究者として採用されました。

Q:赤外線天文学とは?

眼に見える可視光線よりも波長の長い「赤外線」で宇宙を観測、星の進化を解明する学問です。画面を使って説明しましょう。


赤外線天文学

Q:「あかり」のデータアーカイブについて教えてください

データアーカイブ

Q:DARTSを今後どのように発展させていきたいですか?

天文データのアーカイブは、世界に何カ所も大規模なデータアーカイブセンターがあって、それぞれがサービスを競い合っています。その中でDARTSの特徴といえば、天文衛星のみならずISASのさまざまな衛星のデータが一括して見られるというところです。その特徴を活かしたいとなると、やはりデータを組み合わせた利用の仕方が追及されるようになってくると思うので、そのためにはどうすればよいかを考え、発展させていきたいですね。

Q:これまで宇宙研で仕事をしてきて大変だったことは?

2つあります。1つはJAXAの職員としていろいろなミッションをやっていくというところで、個人プレーではなくみんなで組織としてやっていかなければいけない、そういった組織作りや、チームを運営していくところは非常に大変でした。一方で、それが成果になるとみんなで喜べるのがいいですね。2つ目は個人的なことですが、自分自身の研究をする時間がなかなか取れないっていうのがつらいですね。

Q:これから先も研究を続けていく上で期待していることは?

今、個人的に取り組んでいる研究テーマが非常に面白くて、新しい種類の天体を発見したかもしれないという、興味深いテーマなので、そこを明らかにしたいですね。モチベーションとしては非常に高いです。

Q:皆さんにメッセージをお願いします

将来、宇宙に関わって仕事をしたいという方もいらっしゃると思います。まずは興味を持ち続けるのが一つですね。あとはそれを実現するためには、世の中のいろんなことを学んで、自分の能力を伸ばしていかなければなりません。その過程を楽しんでやり遂げられるといいかなと思います。それから、よく親御さんから「どうしたら子どもがJAXAに入れますか」という質問を受けるのですが、どこの大学に行けばいいとか、そういうのは全くないです。JAXAでは文系・理系問わずいろんな専門の方が働いているので、宇宙に対する興味と、自分のスキルをいかに磨いていくかという気持ちが大事なのかなと考えています。

少し話はずれますが、私自身は今、宇宙研の広報誌であるISASニュースと、JAXA全体の広報誌であるJAXA’sの両方の編集に関わっています。どちらも違う切り口で記事が書かれていて、 ISASニュースは専門的な内容、JAXA’sは一般の方に向けた、文化的な活動とJAXAの活動を結びつけるような内容で編集をしていて、どちらも大変興味深いと思っておりますので、ぜひ一度読んでみてください!
ISASニュース
https://www.isas.jaxa.jp/outreach/isas_news/新しいウィンドウで開きます
JAXA's
https://fanfun.jaxa.jp/jaxas/新しいウィンドウで開きます

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