宇宙線中の鉄とニッケルのエネルギースペクトルデータを公開
CALETは2015年8月に国際宇宙ステーションに設置され、6年以上の定常観測を継続しているカロリメータ型の宇宙線観測装置です。この検出器を使って、核子あたり10ギガ電子ボルトから2.0テラ電子ボルトの宇宙線中の鉄成分のエネルギースペクトルを高精度に測定しました。さらに、核子あたり8.8ギガ電子ボルトから240ギガ電子ボルトのニッケル成分についても測定を行い、これらのデータを2022年4月にDARTSより公開しました。
今回の鉄とニッケルのエネルギースペクトルには、陽子や炭素、酸素といったより軽い原子核で一般的にみられているスペクトルの硬化が存在しないことを示しており、今まさに活発に議論されている銀河宇宙線の加速・伝播機構のモデル検証に重要な情報を提供するものです。このデータを用い、他の観測機による過去の測定結果との比較について議論した論文は、研究コミュニティへ速報する意義があると判断され、鉄成分の結果は2021年6月14日に、ニッケル成分は2022年4月1日に、それぞれ国際学術雑誌Physical Review Letters誌に掲載されました。
関連リンク
- Measurement of the Iron Spectrum in Cosmic Rays from 10 GeV/n to 2.0 TeV/n with the Calorimetric Electron Telescope on the International Space Station(英語ページ)
https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.126.241101
DOI: https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.126.241101 - Direct Measurement of the Nickel Spectrum in Cosmic Rays in the Energy Range from 8.8 GeV/n to 240 GeV/n with CALET on the International Space Station(英語ページ)
https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.128.131103
DOI: https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.128.131103 - CALET
https://iss.jaxa.jp/kiboexp/equipment/ef/calet/ - 2年間のデータ蓄積により観測領域を拡張。4.8電子ボルトまでの高精度電子識別に成功
https://www.waseda.jp/top/en/news/60343 - 宇宙線の直接観測により、テラ電子ボルト領域に至る漸次的な陽子スペクトル硬化を高精度に検出
https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.122.181102 - 宇宙線炭素・酸素のテラ電子ボルト領域に至る直接観測により、スペクトル硬化を高精度に検出
https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.125.251102 - DARTS/CALET
https://darts.isas.jaxa.jp/missions/calet/
- Measurement of the Iron Spectrum in Cosmic Rays from 10 GeV/n to 2.0 TeV/n with the Calorimetric Electron Telescope on the International Space Station(英語ページ)